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神経生体アミン

神経活動に必須のアミン―NBA=Neuro Biogenic Amines検査に関する詳細

1) 推奨される採取方法:

ラボが受け取る前の適切な採取と尿検体の操作は、正確な検査結果を出すために、最大限に重要です。ラボ内で検証の結果、朝2番目の排尿からカテコールアミン濃度が上昇するのは、長時間の通勤など病気とは関係ない事柄が原因であることがあることに気づきました。この様な現象があるので、検体採取のタイミングには、より注意しています

患者が如何なる理由であれ、起きることなく夜通し寝ることが出来るのならば、朝一番尿が検査には最適です。逆に、少なくとも8時間起きることなくベッドで寝ることが出来ないのであれば、24時間尿採取が、代謝経路を評価するのに最適でしょう。ある種の食品の摂取は、尿中神経伝達物質検査結果に影響を与える事があるので、 検体採取前は摂取を控えるべきです(以下参照)。


2) 脊髄CSF、OCT検査、血小板検査、有機酸検査と、DDI社の尿NBAs 検査の相違点:

NBAs検査では、最良にCOMTやMAOAなどの酵素の合成と代謝機能を評価します。カテコールアミン類は、モノアミンオキシターゼ(MAO) と、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)などの酵素によって代謝されます。 遺伝的要因と後天的要因は、酵素機能に影響を与えます。突然変異や一塩基変異多型(SNPs)によって、酵素の立体配座や機能が変化することがあり、神経活動に必須のアミンの代謝に影響が出、そして 神経変性疾患(Dorszewska 2013)や 精神神経疾患(Inoue 2003)と関係があります。毒性環境に暴露したときの神経の影響など、神経伝達物質の代謝の変化は、様々な生理的症状の評価に役立ちます。すなわち、患者の神経伝達物質を合成し代謝する能力を評価する無侵襲の手段が得られ、支援的栄養療法への患者の反応を評価するのに使用できます。

  • 有機酸検査(OAT)は、HVA, VMA そして5-HIAAしか測定しないので、図の様なパターンは識別出来ません。更に必要な代謝産物を評価することが出来ません。
  • 有機カチオントランスポーター(OCT)検査の研究と検証は、この検査に経済的利害関係を持つ対象だけに公開されています。よって、独立した文献で検証される余地が残っています。
  • 神経伝達物質の評価に関しては、血小板には安定性の問題があります。
  • 研究や評価に使用されるCSF(脳脊髄液)を採取するために脊髄穿刺が行われますが、これは患者にとって、侵襲性が高く、外傷の原因となり得ます。脊髄穿刺のストレスと外傷は、CSF採取結果のカテコールアミン濃度と基準範囲に影響を与える場合があります。そして、血漿や血小板や尿での値と異なり、いまだ文献でその値が争論の的になっています。臨床の場と疫学的研究で使用されるバイオマーカーは、末梢から採取されるのが優先されなければならないのです。すなわち、血液検体か尿検体でなければならないのです。尿 NBAs検査は、患者による採取が容易で、現在の医療形態に導入するのが容易です。
検査の種類・方法 主要な神経伝達物質の濃度を評価しているか? 中間代謝産物を直接評価することにより、酵素や神経伝達物質の合成と代謝を評価しているか?(COMT, MAOA) 神経伝達物質トランスポーター群の活動を評価しているか? 科学文献でサポートされている様に、治療的介入の効果をモニタリングする為に使用することは出来るか ? 患者自身によって自宅で採取することは可能か? 大規模集団研究の結果は、確立された基準範囲や臨床上の有用性と相関するか? 人の脳脊髄液での結果と相関するか? 検体採取に侵襲性が高かかったり高価な手続きを必要とするか?
Urine Neurobiogenic Amines (尿NBAs)  
メイヨー メディカルラボ
 
Comprehensive Urine Neurobiogenic Amines    
有機酸検査(OAT)              
有機カチオントランスポーター (OCT) 不明* 不明*   不明*   不明*  
血小板           採血
脳脊髄液           脊髄穿刺
*検査を支持する独立した査読論文が存在していません。発行されたすべての文献の著者や共同執筆者が検査と経済的利害関係があります。

CSFによる気分、行動、攻撃性と関係した研究の多くが、血小板から見出されませんが、尿では確実に測定される、セロトニン代謝産物である5-HIAAと、最終代謝産物であるHVAとVMAの変化に着目しています。精神状態の失調は、ペラグラ症状の患者ではよく見られることですが、或る研究によると、尿中での5-HIAA濃度の低下とCSFでの濃度低下、そして血小板中のセロトニン濃度の低下が相関していました。COMTとMAOAの機能に対しては、HVAとVMAを評価する事はあまり意味がありません。


3) キヌレニン代謝については?

どのようなバイオマーカーであれ、追加するとコストが増大します。過剰のトリプトファン、炎症性シグナルの増加、細菌のLPS、コルチゾール、そして加齢によってキヌレニン代謝が亢進するので、ほとんどの抗炎症戦略、腸機能の回復戦略、そして抗加齢戦略は、キヌレニン経路によって調節されます。キヌレニン代謝酵素に遺伝的変化を引き起こしている人の場合は、この経路の活動を低下させる為に、しばしばメラトニンが使用されます。


4) 脳血液関門があるので、神経伝達物質検査は脳内と相関関係が無いのではないか?

尿中の神経伝達物質は、主には、末梢神経の活動と消化管の腸神経系の活動の反映です。尿中に排出される神経伝達物質の大部分は、末梢の代謝の反映ですが、20%以下はCNS(中枢神経系)由来です。微生物叢中の細菌は、通常の腸-脳-微生物叢のクロストークの一環として、神経活性化合物を合成します。そのため、腸内微生物叢の破綻によって気分や行動に影響が出ることがあります。 尿中神経伝達物質の濃度変化は、睡眠時無呼吸、消化管腫瘍、そしてフェニルケトン尿症などの遺伝性神経伝達物質代謝異常疾患で報告されています。アテローム性動脈硬化のリスクに対する経済社会上の要因と心理社会的な要因(例、ストレス)の影響を評価するために、尿中カテコールアミン濃度とコルチゾール濃度が測定されました。環境毒性暴露もまた、尿中神経伝達物質濃度に影響を与えます。 精神神経症状は、環境からの化学物質や毒物への暴露で起きることがあります。マンガンに暴露した中国の溶接工達では、非暴露群と比較すると、統計学的に有意に5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)が増加しているのが発見されました (Yuan 2006) 。 ポリ塩化ビフェニル(PCBs)への産業暴露が、健康へ及ぼす影響をモニタリングすることを目的とした研究で、ドーパミンの代謝産物であるホモバニリン酸(HVA)とエピネフリン/ノルエピネフリン代謝産物であるバニリルマンデル酸(VMA)の尿中濃度が、三年以上の期間分析されました(Putschogl 2015)。 ベンゾピレン(B[a]P)に暴露しているコークス炉の労働者では、5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)の尿中濃度上昇と共に、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、そしてHVAの濃度低下が起きていました(Niu 2009)。世界保健機関の 神経行動コアテストバッテリー(NCTB)によると、化学物質に被爆した労働者では、記憶力と学習能力が低下していることが報告されました。


5) NBAsを新たに導入するに際して:

神経伝達物質の尿中濃度は、末梢神経系と消化管腸神経系の活動を主に反映しています。 尿中に排出される神経伝達物質の大部分は、末梢の代謝を反映しています(Eisenhoffer 2004) 。しかしながら、トリプトファン-5-ヒドロキシラーゼは例外としても、神経伝達物質合成と代謝の酵素機構は、血液脳関門(BBB)の両側で、(同一でないとするのならば)しばしば類似しています(Cansev 2007)。尿中の神経伝達物質分析は、神経伝達物質のアンバランスを識別し、酵素機能を評価し、そしてリスク評価に臨床上有用です。 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の疫学的研究によると、対照群と比較して生涯にわたるPTSDの患者で、ドーパミン、エピネフリン、そしてノルエピネフリンの平均尿中濃度が、有意に上昇している事が発見されています(Young 2004)。またこの研究では、PTSDではないが大うつ病性障害の研究用被験者で、尿中カテコールアミン濃度が増加していることも報告されています。ADHD (Marc 2010)の研究で、尿中神経伝達物質濃度の変化が報告されています。そして、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、そしてトリプトファンなどの神経伝達に重要なアミノ酸の尿中濃度の低下が報告されています (Ghanizadeh 2013)。2015年の或る研究 (Fryar-Williams 2015)によると、対照群と比較して統合失調症患者では、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、そしてヒスタミンの尿中濃度が上昇している事が、報告されています。この結果は、被験者の症状重篤度のレーティングとも相関していました。


6) この検査の利点:

カテコールアミンを測定するのには、いくつかの方法がありますが、LC-タンデム (4極子) 質量分析法が、標準になってきています (Li 2014)。私たちの検査では、患者の評価や治療に有用な、重要アミノ酸神経伝達物質と微量アミンを含む、より広範な検査対象をそろえています。私たちの検査では、COMTとMAOAの正常機能に依存している代謝産物が検査されるので、これらの代謝産物のパターンに変化があると、気分、認知機能、そして行動に影響を与える酵素欠損を識別出来ます。私たちのウェブサイトFunctional Assessment of Urinary Neuro-biogenic Amines: A Comprehensive Guide では、支えとなる栄養素、毒物への暴露の影響、抗炎症プロトコール、解毒の支援、そして各神経伝達物質に対する詳細な生化学情報などを提供しています。


7) DDI社のUAA(尿中アミノ酸)検査とNBA検査の関係。そして、尿中アミノ酸とNBA検査を一緒に使うことの利点は:

UAA検査によって、神経伝達物質前駆体の入手可能性に関する情報が得られ、さらに以下に述べる様な体内のその他の系の概略的な情報が得られます。:

  • 消化器機能-消化器疾患は、神経伝達物質合成と代謝のアンバランスから生じることがあり、また、酵素機能と神経伝達物質濃度に影響を与える栄養失調を引き起こす事があります。微生物叢中の細菌は、通常の胃腸-脳-微生物叢のクロストークの一環として神経活動に影響を与える化合物を合成しています。微生物叢の欠損によって、気分や行動に影響が出ます。細菌性ディスバイオーシスでは、βアラニンなど、CNS機能に影響を与え、神経活動に毒性の影響を与える化合物の濃度が増加します。アミノ酸検査で測定される、βアラニンは、CNSの発達と活動を抑制し、γアミノ酪酸(GABA)の活動を抑制します。そして、高βアラニン尿症は、発作や昏睡と関係します。
  • 肝機能–CNS機能の失調は、肝疾患の症状です。そして、環境毒素とアンモニアやアルデヒド類などの代謝上の副産物を適切に解毒し除去するためには肝機能が正常であることが必要です。ALT酵素とAST酵素の代謝産物は、アミノ酸検査で測定されています。
  • グルタチオン(GSH)の状態:–グルタチオン(GSH)は、体内の主要な抗酸化剤なので、BBBの背後でのGSHの合成は、正常CNS機能に必須です。アミノ酸検査では、GSH合成に必要なシステイン、グルタミン酸、そしてグリシンの入手可能性を評価しています。
  • メチレーション– 24時間 UAA検査によって、メチレーションとS-アデノシルメチオニン合成に関する手がかりが得られます。アミノ酸検査で測定されるシスタチオニン濃度の高低によって、酸化ストレスを増加させ、GSH合成を減少させる、BBBの背後のメチレーション問題を判断できます。
  • 尿素回路機能– グルタミンとアスパラギン酸濃度が適切であることは、尿素に転換するために、アンモニアを肝臓へ輸送するのに必要です。アンモニアの全身性濃度上昇は、有毒で次に挙げる様な症状があります。すなわち、タンパク質不耐症、頭痛(片頭痛)、疲労感、 易刺激性、下痢、そして吐き気。これらは、高タンパク食で特徴的な症状です。CNSで慢性的にアンモニア濃度が上昇すると、認知機能の低下、精神錯乱、 ろれつが回らない、そしてかすみ目がおきます。尿素回路の代謝産物は、アミノ酸検査で測定されます。

検査にあたり、メイヨークリニックメディカルラボが控えることを勧める特定食品:

セロトニン-検体採取48時間前から、アボカド、ナツメヤシ、ナス、果物全種(バナナ、メロン、グレープフルーツ、キューイフルーツ、カンタロープ、パイナップル、オオバコ、プラムを含む)、トマトとトマト製品を控えることを勧めます。 カテコールアミン類-カフェイン飲料、そして、ナッツ、バナナ、或いはチーズなどのニコチンやチロシンを豊富に含む食品。少なくとも検体採取12時間前からカフェインとニコチンを、48時間前から食品を控えるべきです。


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