DMPS 医師用指導要綱
DMPSは米国とカナダで薬品として承認されていません。この書面が作成された時点においては、薬剤の調合時に使用可能な原薬として米国FDAリスト中に記載された薬剤です。しかしこのリストは未完成ですので、FDAがその使用、安全性、及び効果を認めた薬品ではありません。次の情報はDMPSに関する科学論文からの引用で、これは単に指導用に使用される事を目的にしています。何らDMPSに関するアドバイス、処方や使用法を提供するものではありません。
DMPS は急性又は慢性の金属中毒の解毒剤です。分子構造はC3H7O3S3Na.です。DMPSはキレート剤の近似ジチオール群に属します。DMPSは欧州では50年以上に亘り、広く使用されています。代表的なメーカーはドイツ, ベルリンのHeykel-Chem.-pharm. Fabrik Corporation 社で、この会社は1970年代以来医薬品を製造しています。DMPSはドイツでは最終製品(経口、又は注射液)として処方箋でのみ商品名で販売されています。米国においては、ライセンスを持つ薬剤師が医師の処方箋に基づき原薬として使用しています。
DMPSは広い範囲の有毒金属や内在性の必須金属を可動化させます。 1対1のDMPS―金属の錯体の平衡定数は、次の順位で低下します。Hg2+ (水銀) > Ag (銀) > CH3Hg+ (メチル水銀) > Cd2+ (カドミウム) > Cu2+ (銅) > Pb2+ (鉛) > Zn2+ (亜鉛)。 DMPSと金属の錯体は近いSH グループに属すので、DMPSは硫黄蛋白質(メチオニン、システイン、シスチン)に結合しやすい重金属と親和性があります。一度金属イオンがDMPSと結合すると、安定した複合体が生成されます。また結合されると、金属の毒性が低下し、本質的な生体構成要素、例えばある種の酵素(器官と細胞の機能不全をもたらすような)、を持つメルカプト基に結合する事が出来なくなります。DMPSは水銀、砒素、アンチモニー、ビスムス、鉛、カドミウム、コバルト、銅、銀と結合します。次のイオンを持つ化学合成は弱いものです:金、鉄、マンガン、モリブデン、タリウム、タングステン、亜鉛。DMPSはカルシウム、マグネシウムとは反応しません。長期の治療に使用しても、DMPSは必須元素の減少を招くことはありません。DMPS投与を4年半の間300gから800mg毎日取り続けた患者の場合でも、微量元素の容量変化は見られませんでしたし、水銀中毒の治療に毎日、経口又は注射による治療を受けた患者の場合も見られませんでした。
重金属は必須微量元素に影響を与えます。治療前、又は治療中も、特に慢性中毒の場合は微量元素のチェックをすることは必要です。特に亜鉛量の低下と関連する慢性重金属中毒の場合はチェックが大事です。現在の微量元素欠乏症は、亜鉛欠乏症の一例で見られるように、DMPSの臨床状況では症状を悪化させることがあるかもしれません。この症例では、臨床で使われるDMPS によって、亜鉛と銅の排泄が増える事が認められました。然しながら、排泄はエデト酸カルシウムの場合より多くはありませんし、DMPSを中止すると排泄も止まりました。尿中の銅排泄量が増える場合は、重金属中毒の結果でしょう。金中毒と水銀中毒になった動物では、腎臓への銅の排泄が増加するのが認められています。重金属は、金属結合性蛋白の形成を誘発し、この金属結合性蛋白は銅を保持するので微量元素の細胞内含有量が増加します。ニッケルではこのケースは見られません。また色々な疾病によって銅の含有量が増えることがあります。亜鉛や他の微量元素はDMPSと同時に投与すべきではありません。キレート剤であるDMPSがこれ等と結合して、ミネラルとDMPSの生体内量を低下させるからです。
DMPSは水溶性だから、経口や注射によって投与する事が出来るのです。経口投与は急性および慢性中毒の両方に処方できますが、静脈注射は経口が処方できない急性中毒の場合に主に使用されます。DMPSは結晶形状では安定しています。また140℃で2時間加熱されても解毒剤の効力を維持します。殆どのジチオールがそうであるように、一旦溶液になると(水と混ぜて)DMPSは、特にpH が7か7以上になると、酸化作用に敏感になります。
毒性金属の尿中排泄量の増加、あるいは血液と血漿内の有毒金属量の減少は通常キレート剤の臨床効果を評価するために使われます。然しながら、キレート剤によって、重要な標的臓器の負担を軽くし、病的な状態からの回復はもっと重要です。キレート剤を使って血中濃度を変えることなく臓器を綺麗にすることが可能なのです。他のキレート剤でも示されているように重要な臓器(例えば、脳)に重金属が溜まるのは危険です。動物実験ではDMPSによる脳への金属の増量は認められない事が実証されています。
DMPSはキレート化効果と抗酸化作用効果があります。動物モデルでは、DMPSは放射線曝露に対する保護作用があります(曝露前の保護措置)。ストレプトマイシンの内耳神経毒性の予防効果、青酸化合物の毒性を低減、慢性肝炎の抗酸化と回復効果がある事が示されました。
生物学的利用法
DMPSを経口で処方すると、50%が消化器で急速に吸収され、腎臓を経て排泄されます。尿中の濃度が一番高くなるのは経口投与の2~3時間後です。動物モデルでは経口投与後、12時間経過するとDMPSも新陳代謝促進剤も検出されなくなります。 DMPS を注射で投与後、腎臓を経て比較的早く排泄されます(1時間で半分くらい、24時間で90%くらい排泄されます)。静脈注射によるDMPSは又、腸、胆管を経て排泄されます。DMPSを経口や注射で反復投与しても、器官への蓄積は起こりません。
【投与のルート】
DMPSは経口、静脈注射、筋肉注射で投与されます。
【副作用】
DMPSは全身と局部での毒性が低い物質で、長期間使用しても充分に耐容されるのが一般的です。DMPS療法で副作用が報告される場合が稀にあります。治療中に報告された反作用のうち、DMPSと因果関係があると見られるものはわずかです。症状悪化を起こしたのは重金属の影響であろうと判断されます。水銀中毒の症状として、皮膚反応がしばしば記述されています。(例えば、DMPS療法の治療中に歯肉炎と発疹が見られることがありますが、DMPSが原因で発症したものではなく、チメロサール中毒を持つ患者に起こります)。また白血球減少症は塩化第二水銀が引き起こす症状です。白血球数の減少は銅の中毒でも見られます。また銅では発熱(銅発熱)も報告されています。悪心、頭痛、味覚の変化、は各種の重金属中毒による副作用です。DMPSによる療法では、金属がDMPSで可動化されるのでこれ等の症状を一時的に悪化させることもあります。 DMPS投与の場合に、患者は投薬が体の中に残っている限り、卵の腐ったような臭いを感じることが多いですが、これはDMPSの薬剤が硫黄分によるからです。
【アレルギー反応】
副作用は殆ど場合アレルギー性で、特に長期治療に使用される時に見られました。症状は通常軽度ですが、痒み、悪心、めまい、発熱、無気力感、皮膚反応(発疹、蕁麻疹)、粘膜の炎症、発熱と悪寒などです。DMPS投与による過敏症反応は報告されていません。アレルギー反応は、特に治療しなくてもDMPS投与を止めてから3日から5日の間に消失します。 心血管性反応:DMPSを非経口的に投与した場合にのみ起こります(特に注射などにより急激に投与した場合)。症状は、めまい、無力感、悪心、動悸、胸部圧迫感などです。
DMPSはFDA が承認するものではありません。
この情報は指導要綱用であって、DMPSの使用に関するアドバイス、処方、治癒を目的とした物ではありません。
DMPS 米国特許番号:4382040、4720379、カナダ特許番号:1,139,782
書類の日付:2001年3月